最首實(さいしゅみのる) 建具組子

最首實

いすみ市内在住の最首さんは、現在では数少ない組子職人です。
組子とは、釘を使わずに木を組み付ける技法で、建具や欄間の格子などを構成する細い桟のことを言い、身近なところでは障子の縦横の桟も組子の一つです。最首さんは東京で修業した後、先代より伝統技法を受け継ぎ、非常に緻密で美しい組子を作ります。

最首さんは言います。「戦前、建具の職人ならば誰でも組子ができたんです。皆、組子の技を競って学び、『組子ができなきゃ戸屋(とや)』と言われたほどでした。」
職人は自分で食っていくために、組子の技術を上げるにはどうしたらいいかと考える。考えても技術は向上しないので、親方や先輩から技術を教わりたい。でも当時は、親方はおろか、先輩だって技術を教えてくれるような時代ではなかった。自分が先輩の家に遊びに行くと、その場で道具・品物に布が被されて、とても技術を教えてもらえる雰囲気になかった。先輩だってライバルだったのです。 それでもある日言われた言葉が忘れられません。
「人には盗んで罪にならないものもある。」
それから現場で何とか親方先輩の技術を盗もうと必死に学びました。組子の不思議、手技の凄さ、先人の知恵。組子ができるようになると木工パズルにも熱中しました。組子の技術を他人が思いもつかないパズルに活かすのが快感でした。

 今、最首さんは子供たちに組子の技術を知ってもらうべく、出張体験学習会などに参加されています。
今では組子の注文もめっきり減ってしまい、修繕が主な仕事となってきました。
「こんなお金にならない技術なんて・・・」最首さんの悔しさがにじみ出ます。

先日、最首さんが倉庫に眠らせていてもつまらないからと、人丈ほどもある衝立を持って来てくださいました。その組子の緻密さ美しさ、狂いのない確かな技術、感動して見とれてしまうほどでした。
「建具は工芸品じゃないよ。」最首さんは謙遜しておっしゃいます。
これを伝統工芸と言わずして何と言おう。こんな建具が家にあったら心地良いだろうな。毎日が嬉しいだろうな。戸を開け閉めするだけで喜びを感じることができるだろうな。
お金には代えられない価値がそこにある。それを教えてくれる人がそこにいる。
「人には盗んで罪にならないものもある。」
何気ない一言に激しく感動しました。

最首さんは今年職人生活62年。いつまでもお元気で、組子について教えていただきたいものです。